平成20年度 日本理化学協会賞 表彰
(物理) 石川県立輪島実業高等学校 沖野 信一 先生
【研究主題】 ヘリウムの教材化について -授業実践と物理的な背景の検証-
[選定理由] ヘリウムによるドナルドダックボイス現象は、物理に興味を持っていない生徒にも良く知られており、不思議な現象であろう。また、授業での演示も容易である。この現象を生徒実験として探究する過程で,気体や金属棒が示す固有振動数や定常波について学んで行くという学習の流れは、物理が好きでない生徒にとっても自然であり、何より学習のモティベーションが高まる。本実践では、@この現象を解明して行く過程を生徒実験による探究活動とした。A固有振動数を測定する等をあえてせず、風船をたたいたときの音を聞いて、その高さの違いをとらえさせている。B難しい物理用語や計算を巧妙に避け、しかし、生徒は一定の納得には至る。Cその授業の背景には、自ら実験をして得たデータに基づく定量的な事実と、理論的な理解がある。といった点が評価できる。具体的な不思議さを実験を通して探究的に解明し、その背景についても実験データに基づく深い理解が得られる等、本実践は物理授業のあるべき姿の一つとも言える。 この現象に関して先行する理論や実験、授業実践、テレビ番組等は少なからずあるが、このような授業の姿勢をさらに発展させることも期待して、日本理化学協会賞にふさわしいと考える。
研究論文 物理(PDF/368KB)
(化学) 北海道立旭川西高等学校 萬木 貢 先生 (発表時 北海道立旭川東高等学校)
【研究主題】 卵白アルブミンを用いた実験の教材化
[選定理由] 日常的な卵白を題材として、その主成分のアルブミンの結晶化、簡易的な電気泳動、さらには、卵白タンパク質の電気泳動による分子量測定を行っている。卵のように日常生活に関連の深いものを教材化することは、化学Tの指導要領に「日常生活との関連を深め」とあるように、生徒の興味・関心を深め、自ら探求しようという意欲を喚起するために有効である。 タンパク質の結晶化や、電気泳動の定量化実験とその応用としての分子量測定などは、一般の化学の教材にはない興味深いものである。@タンパク質の結晶化については、通常の器具と薬品を用い、簡単な操作で行えるよう工夫されている。A卵白タンパク質の簡易電気泳動実験も、比較的簡単な装置を用い、ニンヒドリン反応による色の変化で移動がわかるよう工夫されている。B卵白のゲル電気泳動実験は、大まかなタンパク質の分子量を測定できることが興味深い。この実験は、操作に時間と手間がかかるが、課題研究や化学部の活動として取り組ませることも考えられる。 日常生活に関わりの深いものを素材として、今までにあまり高校の現場でとりあげられなかった、しかし高校化学にとって意義深い教材に工夫したことは、日本理化学協会賞にふさわしい研究であると考える。
研究論文 化学(PDF/455KB)