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平成22年度 日本理化学協会賞 表彰

 

(物理)  兵庫県立御影高等学校  大多和 光一 先生  (発表時 兵庫県立有馬高等学校)

【研究主題】  水面差を利用したボイルの法則の検証実験

[選定理由]  ボイルの法則の実験は、これまでガラスの管で水銀を用いて空気を閉じ込め、ガラスの管を傾けて、空気に加わる圧力を変え、体積を測る実験を行っていた。 しかし、水銀の取り扱いが困難なこと、環境への配慮のためか、この実験は敬遠されがちであった。
 本実験では、水銀の代わりに水を用いて、大気圧と水圧によって気体に加える圧力を変え、気体の体積を測定する。 実験は2本のアクリルパイプをゴムチューブでつないだ自作装置で行う。 本実験の優れているのは、@実験装置は手に入りやすい材料(アクリルパイプ、ゴムチューブ、ゴム栓など)を用いて、安価に製作できること、A圧力は高さから直読できること、B空気中の圧力は水蒸気圧を考慮することが必要であるが、室温の範囲では小さく、測定誤差の範囲にとどまっていることである。 また、本研究で生徒実験を行っているが、生徒は授業時間の中で10点あまりのデータを得ることができていると報告されている。
 圧力を大きく変えることが難しいため、実験のデータの範囲では圧力と体積が反比例することが見えにくい。 しかし、誤差の少ないデータを得ることができるので、圧力と体積の逆数の関係で整理して、グラフにすると、ほぼ原点を通る直線と見なすことができる結果が得られる。 安価に製作できる自作装置を用いて、誤差が少なく、手軽に気体の法則を実験できる。実験を取り入れた授業ができることは、生徒の思考力を高めることができ、高校物理にとって有益であり、日本理化学協会賞としてふさわしい研究である。

    研究論文 物理 (PDF/372KB)

 

(化学)  東京都立新宿高等学校  後飯塚 由香里 先生

【研究主題】  一目瞭然有機混合物の分離 〜官能基の理解を深めるために〜

[選定理由]   芳香族の有機混合物の分離確認については、従来から行われている実験方法があったが、このような実験では、分離した有機化合物を確認しにくい難点があった。 本研究は、各有機化合物を染料(色素)で置き換えることで、分離した有機化合物を簡単に視覚的に確認できることができ、官能基の働きについての理解を深めることができる点に独創性がある。
 本研究の優れている点は、実験方法そのものは、従来の手法ではあるが、@フェノールなどの取り扱いに注意を要する物質の使用を避けて、食紅などの安全な染色液を使用していること。 A若干色が薄くなる課題はあるものの、色の変化が明白であり見た目にも美しいこと。 B比較的安価で使用量も少なく費用が安いにもかかわらず効果が大きいこと。 C生徒の興味・関心のある色素であり、実験に対する意欲が高められること。 D生活体験のうすい生徒全員に分液ロートを操作させることができること。 E多くの高等学校で実践できる内容であり、授業以外にも、課題研究や化学関係の部活動にて取り組み、内容の一層の発展を期待できる研究である。
 有機混合物の分離を通して、官能基の働きの理解を深めるための実験の開発に取り組み、手軽に多くの高等学校で実践できる実験としてまとめたことは、高校化学にとって大変意義深く、日本理化学協会賞にふさわしい研究である。

    研究論文 化学 (PDF/578KB)